『ビジネスエリートになるための教養としての投資』を読んで

『ビジネスエリートになるための教養としての投資』 奥野一成 著

投資の必要性は既に分かっていても、証券口座の開設手続きが煩雑なためになかなか作業が進まない、という人が依然として多くいます。また、「つみたてNISA」や「iDeCo」が一体何なのかを知らない。あるいはそれらの存在すらも知らない、という人がいます。

そういう人たちに声を大にして言いたいのは、「一日も早く投資を始めて下さい!」ということです。なぜならば、お金が殖えていくのには一定の時間がかかるからです。高齢になってから始めたのでは時間が足りません。

著者は日本が少しづつ貧しくなっている現状に危機感を抱き、それを食い止めるには日本人全員が「投資家の思想」を持つことが大切であると説きます。

私がお客様のキャッシュフロー表を作成すると、年齢が70代に差し掛かる頃に家計が赤字になる人がほとんどです。その人の意思にかかわらず、誰もが100歳まで生きてしまうリスクを抱えているのに、30年間分もの生活費が足りない状況に陥ってしまうのです。

著者は、社会保障制度や公的年金制度は100歳まで生きることを前提として作られていないこと。このために長い老後の生活費が不足してしまうという事態を解決する方法として、以下の二点をあげています。
①現役時代に収入を増やし、自己投資を行うこと
②株式投資を行うこと

この本の内容は、二十歳超えの人や学生ですと半分くらいは理解できると思います。そしてこれら2つの解決方法は、親の立場にある人ならば、子どもたちが中学生くらいになった時から積極的に教えたいことでもあります。それには、まず親が投資を始めていないと話になりませんよね。

そもそも投資とは一体何なのか。なぜ投資を始めることが日本人の責務なのか、という問いに対しての回答のみならず、既に投資を始めている私にとっても予想外なことが書かれていたので、一瞬たじろぎました。しかし、よくよく考えれば当たり前のことで、いかに自分が日頃頭を使って考えていないのかということを指摘されたようで、思わず赤面してしまいました。

それは何かと言うと、「新興国が成長することと、その国に上場している企業が生み出す利益は必ずしも連動しない。その成長を最も享受できるのは、その国にサービスや製品を提供している(外国)企業である」ということです。つまり、ある国の人口が爆発的に増えて著しい経済成長があったとしても、その国の上場企業が儲かるとは限らない、というわけです。

企業に利益が生み出されるのは、人々の問題を解決した時です。「この商品やサービスがあって本当に良かった!」といかに多くの人に喜んでもらえるかが、企業の利益額を左右するのです。しかし、その企業は自国の企業とは限りません。私が毎日のように使うAmazonやGoogleは皆様ご存知の通り、アメリカの企業です。

経済市場の構造を理解しようとせず、「新興国の人口が増える=新興国の株式や債券を買えばOK」と短絡的な投資行動に出ていた自分が恥ずかしい限りです。
表層的な情報を鵜呑みにするのではなく、自分なりに考えて検証した上で投資するようにしなければなりません。
「情報を集めているだけの人は情報弱者なのだ」という言葉に苦笑いしてしまいます。

他にも、ファンドマネジャーである著者がどのようにして長年利益を出し続けてきたのか、その手法を披露してくれています。「売らなくて良い会社しか買わない」という著者のスタンスは、個別銘柄選びに苦戦している私はすぐに取り入れてみたいと思いました。

資本家になることで世の中を見る視点が変わり、ビジネスパーソンとしての器も大きくなる効用があるのだ、とも述べています。若いうちから資本家のマインドを持っていると、普段の買い物や就職・転職活動をする時の選択や判断に良い影響が出てくるでしょう。

投資をすることの意味を知りたい。投資で失敗したくない。自分の視野を広げたい、という願いを持つ人におすすめの一冊です。

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